令和5年度税制改正 相続時精算課税制度など大幅改正に|不動産相続相談事例 |センチュリー21グローバルホーム
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令和5年度税制改正 相続時精算課税制度など大幅改正に
「資産移転」のタイミングの選択に中立的な改正へ
令和4年12月16日、政府与党から「令和5年度税制改正大綱」が公表され、同年12月23日に閣議決定されました。
今回の改正の中で特に注目したいのは贈与税にかかわる「暦年課税制度」と「相続時精算課税制度」についてです。どのような改正となったのか細かく見ていきたいと思います。
暦年課税は相続財産への加算期間が3年から7年に延長
暦年課税制度とは受贈者1人あたりにつき、1月1日から12月31日までの1年間に贈与された合計額が110万円(贈与税の基礎控除)以下であれば贈与税がかからないという贈与の制度です。
現行の制度で暦年課税を利用した場合、被相続人の相続開始前3年以内に行われた贈与については相続財産に加算したうえで相続税の課税対象となりますが、令和5年度税制改正により相続財産への加算期間(いわゆる持ち戻し期間)が「7年」に延長され、相続税の課税対象となる期間が拡大されました。(延長された4年間の贈与のうち、総額100万円までは相続財産に加算されません)
なお、持ち戻しについては相続の際に財産を取得した者に限られ、法定相続人であっても相続で財産を取得しない者には適用がありません。ですから贈与する相手には子の連れ合い(婿や嫁)、孫、ひ孫などが良いでしょう。
ちなみにアメリカでは遺産課税方式という制度で一生涯の累積贈与額と相続財産額の総額に対して一体的に相続税(資産税)が課税されています。また、ドイツやフランスでは遺産取得課税方式制度で一定期間の累積贈与額と相続財産額に対して一体的に課税されています。持ち戻しの期間はドイツで10年、フランスで15年です。アメリカ・ドイツ・フランスなどでは贈与税と相続税の課税体系が統合されており、相続税や贈与税の税負担が一定で、資産移転の時期の中立性が確保される制度となっていますが、日本では法定相続分課税方式といって、贈与税と相続税が別体系、かつ税負担も異なっていますから、暦年課税を選択した場合は資産移転の時期が中立的ではないとされていました。そのため、諸外国のような課税方式へと見直されるのでは?と噂されてきましたが、今回の改正では暦年贈与の廃止も含めて大掛かりな見直しの議論は先送りされたようです。
なお、この制度が適用されるのは令和6年1月1日以降の贈与です。
相続時精算課税は年間110万円の基礎控除を導入
相続時精算課税とは納税者(受贈者)の選択により、18歳以上の直系卑属(原則として子または孫)が60歳以上の直系尊属(原則として父母または祖父母)から贈与により財産を取得した場合、贈与者ごとに累計2,500万円までの贈与財産には課税されず、2,500万円を超える部分に一律20%の税率をかけて贈与税を課税する制度です。
贈与者である直系尊属が死亡した際には、死亡時の相続財産と贈与財産のすべて(贈与時の時価)を合算して相続税を計算します。計算した相続税からすでに納付した贈与税を控除して精算しますが、不足があれば納付し、過払いがあれば還付されます。したがってこの制度は「生前相続」であり、納付する贈与税は相続税の予定納税とも言え、生きているうちに相続をやってしまおうという考え方です。(相続税対策にはなりません)
適用要件としては贈与者の年齢60歳以上、受贈者の年齢18歳以上(贈与があった年の1月1日時点の年齢)、受贈者は贈与者の直系卑属(子または孫、またその代襲相続人、養子)に限られ、夫婦間や兄弟姉妹は適用できません。また、「養」父母はOKですが、「義」父母は適用できません。
適用対象の財産は種類・用途、財産の価格などはもちろん、年数や回数にも全く制限がないため、比較的自由なタイミングと財産の贈与が可能です。
この制度を利用するかどうかは受贈者の選択により適用され、その選択は贈与者ごとにすることができるので、例えば父からは相続時精算課税制度を利用し、母からは暦年課税制度を利用するという事が可能です。ちなみに一度この制度を選択するとその選択に係る贈与者(特定贈与者)が死亡するまで継続し、途中で取りやめることはできません。ですから特定贈与者からの贈与は暦年課税(110万円の基礎控除)が適用できなくなります。
この制度を選択適用する人は財産を受贈した翌年の2月1日から3月15日までの間に税務署に「相続時精算課税制度選択届出書」を提出しなければならず、この期間を過ぎると選択は認められず、暦年課税の贈与税が課されてしまいます。また、特定贈与者からの贈与については贈与税が発生するか否かにかかわらずすべて申告が必要なので注意が必要です。
しかし、令和5年度税制改正によりこの制度にも基礎控除が創設され、年間110万円までの相続時精算課税贈与には相続財産に加算されない事となりました。ですからこの制度を選択後110万円以下の贈与しか行われなかった年は申告の必要もなくなりますし、相続開始前7年以内でも年間110万円の基礎控除分は相続財産から切り離せるというメリットが生じることになりました。暦年課税と相続時精算課税のどちらを選択すべきかは相続のタイミング、贈与者と受贈者の属性や贈与財産の価格、種別などを考慮して検討する必要がありますが、どちらにせよたくさん贈与を受けられる方は羨ましい限りです。