「相続人無き遺産」過去最高 21年度は647億円が国庫へ|不動産相続相談事例 |センチュリー21グローバルホーム
-
「相続人無き遺産」過去最高 21年度は647億円が国庫へ
相続人不存在とは?
つい先日ニュースを見ていた時に目に飛び込んできたのが「相続人なき遺産、647億円が国庫入り 21年度過去最高」という見出しでした。
仕事柄相続人のいない財産の処分をお手伝いすることもあり、少し身近に接してはいたのですが、「まさかこれほどの金額になっているとは!」という驚きとともに、正直「なんてもったいないことを!」と思ってしまいました。
相続人不存在とは、亡くなった人の財産を相続する人がいない状態の事です。民法で定められた法定相続人がいない場合か、いたとしても何らかの事情で相続しない、相続できない(相続放棄・欠格・廃除等)場合は相続人不存在となりその財産は最終的に国のものとなります。
この記事によると、相続人不存在による相続財産の国庫への収入は20年度と比べて7.8%増の647億459万円だったそうです。01年度は約107億円、11年度は約332億円ということですからこの20年間でなんと6倍にも増えています。
相続人不存在の場合の手続きと流れ
相続人不存在の場合はその財産を「相続財産管理人」が管理します。相続財産管理人を立ててもらうには債権者や遺言により財産をもらうことになっていた者、特別縁故者等の利害関係者、または検察官により家庭裁判所に申し立てられ、家庭裁判所により通常はその地域の弁護士が選任されます。先ずはこの相続財産管理人の選任から始まり、その後は、大まかに以下のような流れと手続きになります。
①相続財産管理人の選任
相続財産管理人の選任後、家庭裁判所は被相続人の死亡を官報で2ヵ月間公告し、相続人がいたら名乗り出るよう求めます。
②債権申し立ての公告
①で相続人が現れなかった場合、債権者や財産をもらう事になっていた人がいれば期限を2ヵ月以上設定し名乗り出るよう公告します。
③相続人捜索の公告
②でも相続人が見つからない場合、さらに相続人捜索の公告をします。この期限は6ヵ月以上を設定し、これでもなお相続人が見つからない場合、「相続人不存在」が確定します。
④特別縁故者への財産分与申し立て
相続人不存在が確定した後、3ヵ月以内に特別縁故者が家庭裁判所に申し立て、認められれば財産分与がなされます。
3ヵ月以内に申し立てがない、もしくは申し立てが却下された場合には被相続人の遺産は国庫へと帰属することになります。
このように相続人不存在を確定するまでには3回も公告が行われ、期間も約1年を要する事になります。最終的には国庫に帰属し、また何かのお役立ちに使われるのでしょうが、やはり大切な財産ですから元気なうちに自身で財産の行き先を決めて間違いなく渡せるような対策が必要だと思います。
相続人がいない場合にやるべきこと
もし相続人がいない場合で、でも誰かに財産を残したいなぁと思っていても、生前なんの準備や手続きもせずに亡くなってしまうと先ほど書いたように財産を渡すにも残された方に時間や手間がかかります。また相続財産管理人への報酬なども含めて財産が目減りしたり、また思ったように財産を渡せなくなってしまう事もあります。このようなリスクを避ける為にも最初にやっておくべきことはやはり遺言書の作成です。特に遺言書を書いておいた方が良いケースは以下の通りです。
①内縁の配偶者等がいる場合
被相続人と生計を同じくしていた者がいる場合
(内縁の配偶者、事実上の養子・養親)
②療養看護などお世話になっている人がいる場合
(業務として報酬を受けて看護していた人は除く)
③事業を経営している場合
後継者に事業を引き継がせるため、事業用の個人資産を相続させる必要がある場合や、遺言は無くても被相続人と密接に関係があった者がいる場合等
④寄付をしたい場合
経営している法人や特別な関係がある団体がある場合
上記のような特別縁故者に当たる人には法律上遺産の相続権がありません。また特別縁故者への財産分与は先に債権者、受遺者への支払いが優先されるため、この時点で遺産が無くなると特別縁故者は遺産を受け取れません。このような方に財産を残したい場合はしっかりと遺言書を残しておかないと希望通りに財産を受け継がせることが難しくなってしまいます。
遺言書には自筆証書遺言、秘密証書遺言、公正証書遺言の3要式があります。自筆証書遺言などは自分で手軽に作成できるものの、無効となるリスクも高まります。また秘密証書遺言も発見されなかったり、同じく無効となるリスクも高いことから弁護士等に依頼するか、確実性の高い公正証書遺言をお勧めします。
大切な財産を守りましょう
以前のコラムでも「所有者不明の土地」の件に触れましたが、これだけの財産が所有者不明となったり、行き先が無くなってしまうというのは寂しいものです。来年度には民法・不動産登記法の改正法が施行される予定ですが、戸籍や住民票の移動、また相続登記の義務化だけではなく、土地の国庫帰属精度や遺言等のサポートを充実させることと、孤独や孤立等が増えている社会そのものを変えていく必要もあると思います。