「路線価による資産評価否定」⁉ 相続課税、例外適用に最高裁の判断は?|不動産相続相談事例 |センチュリー21グローバルホーム
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「路線価による資産評価否定」⁉ 相続課税、例外適用に最高裁の判断は?
相続課税訴訟、最高裁で弁論開く
不動産の相続税額の計算は原則として国税庁が示す路線価に基づいて土地の評価額を算出するのですが、今回注目したいのは実際の取引価格より著しく低い路線価に基づいて不動産の相続税を評価する事の適否が争われているという裁判の行方です。この裁判は一審の東京地裁では国税側の勝訴とし、二審の東京高裁でも同じ判断となり、最高裁に上告されていたもので3月15日に最高裁で弁論が開かれ、判決期日が4月19日に指定されました。
ちなみに路線価とは土地の価格の1つであり、国税庁が道路ごとに1㎡あたりの土地の価格を決めて毎年7月に発表するものです。
土地の形状や条件によっては価格補正が必要になりますが、相続や贈与でもらった土地に対する税金の算出基準となるのがこの路線価という事になります。(詳しくは2021年8月のコラムをご参照ください。https://www.globalhome.co.jp/blog/page_528.html)
例えばタワーマンションを使った節税など実勢価格と路線価との評価の差を使った節税はご存じの方も多いかもしれませんが、この方法も相続税対策としてのマンション購入が明らかな場合などは税務署から否認されるのと同様に、今回のケースも相続開始前の約3年半前から2年半前と短期間に購入されている等、合法ではあるものの極端な節税と判断され、納税者が評価した財産価格について国税が「著しく不当」と考えた場合、例外的に「国税庁長官の指示を受けて評価する」と規定する「財産評価基本通達6項」という伝家の宝刀と呼ばれる国税の特別な手法の是非が大きな争点となっています。
この国税の手法については、過度な節税対策の歯止めとして機能する一方、「著しく不当」とされる基準があいまいだとの指摘もあり、最高裁が上告審で弁論を開く場合、二審の判断を変更する事も多いため、結論を大きく見直すのか、結論として二審の判断は維持しつつも二審とは異なる法的判断をした上で、どのような場合にこの伝家の宝刀を適用するかの「例外規定」を示す可能性もあり、弁論には関係者など多くの傍聴人も集まり、入りきれない人であふれるほど注目の裁判となっています。
どのような問題だったのか?
問題となった不動産は被相続人である不動産会社代表だった北海道の90代男性が2009年に東京都杉並区と神奈川県川崎市に購入した2棟のマンションとその敷地で、銀行から融資を受けて合計13億8700万円で購入したものです。
今回の上告人は2012年に被相続人から相続した相続人たちで、このマンション2棟を路線価に基づいて算定し不動産評価額を約3億3000万円とした上で、銀行からの借入金などを差引き、相続税額について「ゼロ円」と申告したのでした。
これに「待った!」をかけたのが国税庁でした。国税当局では不動産鑑定評価をもとにこの不動産を約12億7000万円と評価し、それに基づき約3億円の追徴課税を課したのです。
対して原告側はこれを不服として課税処分の取り消しを求めて訴えを起こしたというのが大まかな流れです。
上告弁論で原告側は「節税の意図があったとしても路線価によらない評価方法を取るべき事情に当たらない」と主張。また路線価と実勢価格の隔たりが是正されていない現状にも触れた上で「狙い撃ち的に特定の相続財産を不動産鑑定評価によって評価するのは不平等であり、恣意的だ」と述べております。
これに対して国税側は「路線価と実勢価格の間に著しい開きがあり、不動産の客観的な価値に疑いがある」と指摘し、「路線価による評価方法を画一的に適用し形式的な平等を貫くと租税負担の公平を著しく害する事が明らかな特別な事情があった」として適法であると反論しています。
今回の相続人は相続税をごまかそうとか隠そうとかいう悪意があったわけではないと思いますが、このような相続税対策と税務申告をした際に国税庁や司法がどのように判断するのかという点で、とても重要な判決になると思います。
相続税や贈与税のあり方は「経済の活性化」「格差の固定化」「資産移転時期の選択に中立的な税制」という観点からも見直しの声が多く上がっていますが、今回問題となった相続税に限らず国は納税の意義や意味をしっかり理解してもらい、また国民は義務の一つである納税を適切に行わなくてはなりません。