能登半島地震と地価の影響は?価格基準日の災害発生は・・・-不動産コラム「家を売るという事」Vol.38能登半島地震と地価の影響は?価格基準日の災害発生は・・・-不動産コラム「家を売るという事」Vol.38 | センチュリー21グローバルホーム
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能登半島地震と地価の影響は?価格基準日の災害発生は・・・-不動産コラム「家を売るという事」Vol.38
土地には基準となる「価格」があり、(1)公示価格(2)基準価格(3)路線価(4)固定資産税評価の4つです。実勢価格、いわゆる「時価」を入れると5つもあり、一物4価とも一物5価とも言われております。(詳しくは2021年8月号のコラムをご参照ください)
(1)~(4)の価格についてはそれぞれ発表される時期が異なりますが、この中の(3)路線価(相続税路線価)は毎年7月1日に発表されるので、そろそろ発表される時期だなぁと思っていたところ、ふと気になることがありました。
何が気になったかと言うと、土地の価格(時価)は常に一定とは限りませんので、税の価格等を算定するために基準日を定めているのですが、この価格の根拠となる基準日「価格時点」は(2)以外1月1日時点と定められおり、((2)は7月1日時点)今年の1月1日と言えば・・・記憶にも新しい「石川県能登半島地震」が起きたまさにその日が価格の基準日だったからです。
災害が発生して交通機関やインフラが寸断されたり、復興が中々進まなければ、その土地の需要は減り価格は下落するでしょうし、一方で仮設住宅や賃貸需要が高まるなど整備が進み、地価が上昇する等のケースもあると思います。このような状況を踏まえて基準価格は定められていきますが、価格時点当日に災害が発生した場合、その時点での予測もつかない状況の中、価格は一体どう算定したのだろう?という疑問です。
今年の公示地価はどうだったか?
今年1月1日時点での価格をもとに3月26日に発表された石川県全体の公示価格は平均してプラス1.4%と3年連続の上昇となりました。上昇の影響はコロナ禍の影響が減り観光などの産業も回復してきたことや北陸新幹線の敦賀延伸に伴って整備が進んだこと、またそれに伴う住宅地や商業地が牽引して全体を押し上げたようです。
一方で、地価が下落している地域もありました。珠洲市、志賀町、能登地区などの地域ですが、地価下落の大きな理由は、今回の能登半島地震ではなく前年5月に発生した奥能登地震の影響や高齢化、過疎化の進行による下落基調が原因とされています。
ここで気になる1月1日時点の地震の影響は?というところですが、24年の地価公示は「令和6年1月1日午前零時以降に発生した能登半島地震における影響は反映されていない」との注釈がついています。つまり、公表された地価は地震発生前の価格であり、地震の影響は考慮されていないという事になります。
今後の復興計画や進捗状況等に応じて次回の評価に影響してくると見られ、やはり価格時点当日の災害については個別の考慮は難しいので災害前の価格が基準となるようですが、一方でその年に発生する固定資産税、また相続税の基準となる他の価格についての考慮はどうなっているのでしょうか?
(2)基準価格この基準価格は7月1日が価格時点ですから能登半島地震の影響を加味した価格が公表されることになると思います。
ただし、この時点でも現地の確認が難しかったりするなど影響をしっかりと分析できない場所もあるかもしれませんので、正確性の判断は難しいかもしれませんが、9月中旬~下旬に公開されるので公示価格と比べて見ると今回の災害による影響度をある程度計れるのではないかと思います。
(3)路線価
路線価については先ほどの公示価格同様価格時点は1月1日となります。路線価の発表は7月1日ですから基準となる価格からどの程度の影響を考慮して路線価が付けられるのか、また考慮されずに発表されるのか注目したいと思います。
なお、阪神淡路大震災や東日本大震災の時も公表されましたが、路線価と同時に「調整率」というものが公表されます。この調整率とは納税者の負担を軽減するために、地域ごと、地目ごとに細かく分け、地震の影響度に応じて1よりも小さい数値が設定され、路線価にこの調整率を掛けた額で土地評価額を算出でき、納税額の負担を軽減するというものです。
ただ、この調整率はあくまで納税者の負担を軽減するために公表されるものであり、実際の地震や災害の影響により下落したという指標ではないそうなので注意が必要です。
(4)固定資産税評価額
固定資産税評価額についての賦課期日は1月1日となります。また24年は3年に1度の基準年度にあたり、評価替えが行われましたが、総務省から1月16日に「能登半島地震により被害を受けた土地および家屋に係る令和六基準年度向けの評価に当たっては、令和六年一月一日(賦課期日)時点における被災の状況(同日中に生じた災害によるものを含む)に基づいて評価することとなる・・・」と24年度の評価額に地震の影響を考慮するよう通達がありました。
このように基準日を定めて発表せざるを得ないものについてはその当日に大きな変化が起きたとしても直ちに変更はできない事が分かります。ただし、後日公表されるものについては調整をはじめ、一定の考慮がなされるという事です。
ただ、個別に評価しきれないものもあるかもしれませんので、疑問や根拠などは自治体に確認する必要があると思います。
被災地においては一日も早い復興と地域の方の安心安全な生活がおくれるようお祈りすると共に、復興においては様々な状況において我々不動産業者が役立てることも多くあると思いますので、自治体などともしっかり連携していざという時に備えていきたいと思います。